良質なワイン用ぶどうを栽培するうえで大切なこと
2017/11/02
ぶどう樹は生命力豊か!?栽培は容易?
良質なワイン用ぶどうを栽培するうえで大切なことは何か!?
ヨーロッパでは昔から栄養のある肥沃な土地に小麦や野菜を植え、こうした作物が育たないような痩せた土地にワイン用のぶどうを植えてきたという経緯があります。
ぶどうも生育するためには窒素、カリウムなどの栄養素がある程度は必要になりますが、大量に必要ということではなくかなり少なくても生育可能です。
これはぶどうという植物の遺伝的プログラムによるものと考えられています。
ぶどうは蔓性の植物で野生のぶどうは近くにある背の高い樹木に巻きついていきます。
他の樹木と同じ場所に生えるということは、土壌中の栄養分や水分の摂取について競争していかなければいけません。
このような厳しい条件に対し、ぶどうは深く根を張ることで対応しています。
ワイン用生産者が良いぶどうを作る上でぶどうの樹と樹の間をあまりあけずに植える(密植といいます)ことで、ぶどうの樹とぶどうの樹を競争させることでより良いぶどうを得ようとしています。
密植にすることにより、ぶどうの根を深くし、地中深くから養分を吸収させることができます。
植物の生殖パターンを利用したワイン用ぶどう栽培法
栄養生殖と有性生殖
植物には栄養生殖と有性生殖という二つの生殖パターンがあり、環境条件により植物はどちらかを選んでいます。
ぶどうの樹は環境条件が好ましい(栄養や水分がたくさんある)土地であれば、樹はこのままで生きていけると判断しその場で個体として大きくなろうとします。
樹勢が強くなるなどと言いますが、つまり枝葉をどんどん伸ばしていきます。
この生殖パターンを栄養生殖といいます。
一方、環境条件好ましくない(栄養や水分が不十分)土地であれば、ぶどうはその場所では生きていけないかもしれないと判断し別の土地に種を運ぼうとします。
植物は動くことができないので子孫を残そうとします。
すなわち、果実と種を作り鳥に運ばせようとします。
これを有性生殖といいます。ワイン造りにおいて、高品質な果実の収穫を目的とするぶどう栽培においては、ぶどう樹に与える水分や栄養分を不足気味にすることが一般的となっています。
これは植物の生殖パターンを利用したもので、ぶどう樹にストレスをかけることで、ぶどう樹を枝葉を伸ばすことから、果実や種の生産に向けさせる狙いがあります。
ぶどうは果実と種を鳥に食べてもらうことにより、遠くにまで運んでもらい糞と一緒に種を落としてもらい違う土地まで行こうとします。
甘い果実は鳥に食べてもらうためには必要なものとなるのです。
ぶどうの樹は初夏に花が咲き、そのあと実がなるのですが、実がなってからしばらくの間、果実は少しも甘くはありません。
青臭さや酸が多く、甘みが一切ありません。
果実の中で種がまだ出来上がっていないため、この段階の種が鳥に食べられてしまわないように、わざと不味くしています。
この段階の実は葉や茎と同じ色をしており、これはカモフラージュだと考えられています。
しばらくし種が出来始めるとぶどうは実を甘くしていき、黒ぶどうであれば黒っぽく、白ぶどうであれば黄色っぽく色付き(ヴェレゾン)始めます。どんどんと酸や青臭さが取れ甘みや風味が増し美味しくなっていきます。
このように生殖パターンをうまく利用した方法で美味しいワインが出来上がっていきます。
まとめ
- 良質なぶどうを作るためには有性生殖という生殖パターンを活用している。
- ぶどうに適度なストレスを与えることにより良質なぶどうを作ることができる。
ぶどう栽培において、よくテロワールという言葉を耳にします。テロワールとはぶどう栽培におけるすべての環境「土壌」、
「気候」、「人」などぶどうを取り巻くすべての環境を指します。良質なワインを作るためには良質なブドウを作らなければいけません。
良質なぶどうを作るためには、やはり畑が大切だと言えます。ではどのような畑がいい畑なのか?
こちらの水はけのよい畑とぶどう栽培で詳しく書いていますので合わせてご覧ください。